旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「ふうん。婚約破棄されて喜んでる人なんて初めて見た。ま、残念どうし仲良くやろうじゃないの。乾杯」
「乾杯。んっとに、こういうときなんの遠慮もなく話せる相手がいてよかったよ」

 カチンとグラスを合わせて、互いの残念な状況を慰め合う。その時間があまりに心地よかったので、店を出た後、徒歩圏内にあるエビの家で飲み直すことになった。

 雨はようやく止んでくれたけれど、ふたりともだいぶ酔っているので、肩を組んで互いを支えながらフラフラと歩いた。

 そしてたどり着いた彼の家は、落ち着いたブラウンカラーを基調としたおしゃれなデザイナーズマンション。地上九階建てで、エビの部屋は最上階にあるらしい。

「ほほう、部長さんになるとこんないいマンションに住めるんですなぁ」
「誰だよその口調。ま、住み心地は悪くないから、帰んのめんどくさかったら泊まってけば?」
「へへ、実は最初からそのつもり~」

 へらっと笑って図々しい宣言をすると、エビがあきれた。

「まったく、この酔っ払い」
「それはお互いさまでしょ~」

 私たちはへべれけ状態でエレベーターに乗り、最上階のエビの部屋に向かった。

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