旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 千葉くんときたら、隙あらばオフィスでも堂々とデートに誘ってくるわ、すれ違う時にさりげなく手と手を触れ合わせてくるわ、用もないのに意味ありげな視線を送ってくるわで、正直勘弁してほしいのだ。

「なるほど、それはやりにくいな。俺がそれとなく注意してやろうか。お前、女だからって舐められてるのかもしれないし」
「そうしてくれると助かる。……あーあ。なんで好きな人には逃げられて、好きでもない人から迫られるんだろ。世の中って理不尽。そして忘れてたけど口内炎痛い」

 ため息混じりにこぼして、水割りに口をつけた。ふっと苦笑したエビが、畳に両手をついて天井を仰ぎながら話しだす。

「同感。……俺なんてそもそも好きでもない許嫁と結婚させられそうだったし」
「ちょとなにそれ、許嫁って……あんた、いいところのお坊ちゃんなの?」
「……や、別にふつー。でもよかったよ、向こうから婚約破棄してくれたから」

 エビは気が抜けたようにそう語って、自分のグラスを掴むと一気に中身をあおった。どうやら私に負けず劣らず腐っているらしい。

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