旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

『あの、佑香さん。実は私、彼とけっ――』
『もちろん、蟹江さんのことも知っています。今、たっくんのワガママで、一時的に結婚させられているんですよね? たっくんってば、昔からそう。私を嫉妬させるために他の女の人とお付き合いしては、結局私のところに戻ってくるんです』

 ふふふ、と楽しげに笑う彼女が、私には不気味に思えた。

 ……この人、妄想癖があるんじゃないだろうか。隆臣はそんな半端なことをする男じゃない。いくら結婚期間が浅くたって、彼の人間性はわかっているつもりだ。

 しかしどう反論したらいいのだろうかと私が迷っていると、佑香さんは相変わらず屈託のない笑顔を浮かべながら、傍らに置いたバッグから書類を取り出してテーブルに置いた。

『……これ、パーティーの予算案です。お料理は、ミシュランの星付きシェフを呼んで高級フレンチ。シャンパンタワーを会場に四つ。知り合いに歌手の方がいるので、その方になにか歌ってもらって……あっ、バンドの生演奏も!』

 予算案の表を指さしながら、佑香さんが一つひとつの項目を読み上げる。ちょ、ちょっと待って。これ、一般人の誕生パーティーのレベルじゃないんですけど。

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