旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
いくら彼が優秀な人材でも、社長の椅子まで確約されているだなんてありえない。上層部にコネでもあるわけ? そういえば、動物園イベントの時、彼はガンベロの社長の視察に付き添っていたけど……。
私は難しい顔で考え込み、こんがらがった思考を整理する。
隆臣と佑香さんは許嫁。それを画策したのは、自分の会社をより発展させたい互いの父親同士。佑香さんの父親は、鷹取物産の社長。それなら隆臣の父親は――。
まさか、と頭の中にある可能性が浮かんだ瞬間、佑香さんがその考えをあっさり肯定した。
『蟹江さん、ご存じなかったんですね。たっくんが、ガンベロ社長のひとり息子だってこと。彼、幼い頃から周囲のたくさんの期待を背負って、ここまで頑張ってきたんですよ。だから……』
頭がガンガンした。私はてっきり、彼は自分と同じような平均的な家庭で育ったのだとばかり思っていた。
だって、価値観も話も合うし……彼自身、言っていたじゃない。私と一緒に、つつましくても幸せな家庭を築きたいって。あれは、嘘だったの……?
動揺を隠しきれず眉間に深いシワを刻む私に、佑香さんは優しい声音で問いかける。