旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 帰宅後、隆臣と分担して家事をしている間も、いつ別れ話を切り出そうかと思うと苦しくて、気を抜いたら涙が出そうだった。

 隆臣はいつものように優しかったけれど、そばにいるだけでつらくて、正面から顔を見られない。

 そのまま結局別れ話を切り出すタイミングを掴めずにいると、ダイニングで一緒に夕食を囲んでいる時に、なんと隆臣の方から『大事な話がある』と言われてしまう。

『大事な、話……?』

 私は身構えた。もしかしたら佑香さんの言う通り、彼女のもとに戻りたいと言い出すのではないかと、不安になる。

『ああ。今までなかなか言い出すタイミングがなかったんだけど、俺、実は――』

 ……聞きたくない。実は自分は御曹司で、平凡な私なんかと結婚したのはやっぱり間違いだったなんて……。

 私はそれ以上の話を本人の口から聞くのは堪えられないと思い、咄嗟にお腹が痛いふりをして彼の言葉を遮った。

 お芝居なのに、隆臣は本気で私を心配してくれて……それがまた苦しかった。

 隆臣の気持ちは、どこにあるの? 今までの幸せな時間が、全部嘘というわけではないの? 私のこと、少しは本気だった……?

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