旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 未練がましい想いばかり募って、結局なにも進展しないままベッドに入る。布団をかけると嗅ぎ慣れた隆臣の香りにふわりと包まれ、ますます切なくなった。

 このまま、知らんぷりして彼に愛されていたい。でも、そんなことは無理に決まっている……。私はいったいどうしたらいいの……?

 ベッドの中で思い悩んでいると、やがて隆臣が寝室に入ってきた。けれどなにを話したらいいのかもわからず、私は思わず目を閉じて、狸寝入りをした。

 すると、私が寝ていると思い込んだ隆臣が、とうとう決定的なひと言を口にした。

『ごめんな、理子。……俺、御曹司なんかで』

 申し訳なさそうなその声を聞き、私は彼と別れる運命からはもう逃れられないのだと知る。

 彼は、私を捨てて佑香さんと結婚するのだ。今までの彼の気持ちが嘘だったとは思いたくないけれど、そもそも隆臣の結婚は個人の意思でどうこうなる問題ではなかったのだ。


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