旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
ネットカフェ生活三日目の月曜日。出勤してすぐにチームメンバーを会議室に集め、佑香さんに依頼されている例のイベントについて説明した。
「……蟹江さん、なんすかこれ。タチの悪い冗談?」
千葉くんが、私が作成した企画書を眺め、半笑いで言った。他のメンバーも、首を傾げながら企画書を睨んでいる。
しかし、私は毅然とした態度でハッキリ告げる。
「冗談なんかじゃない。私たちの同僚、海老名隆臣の三十歳の誕生パーティーで、鷹取佑香さんという女性が彼に結婚を申し込む。私たちは、その手伝いを全力でやります」
「り、理子ちゃん……? どういうことなの? だって、海老名くんと結婚しているのは理子ちゃんでしょう?」
一番近い席に座っている萌子さんが、遠慮がちに私の表情を窺う。きっと、私と隆臣の間になにがあったのかと、心配してくれているのだろう。
私はなんでもないことのように苦笑しながら、みんなに向けて話す。
「驚きますよね、ごめんなさい。でも、実は彼との結婚は最初から期間限定のお試しだったんです。ま、その結果、合わなかったことですね。だから、彼は彼の本来結婚するべき相手と結婚する。その相手がこの鷹取さんって女性なんです」