旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「まぁいいや。これ、おもしろいから取っておこう」
「もー。いつか会社でネタにするつもりでしょ」
「ネタにしたいならお前が持ってる?」
「結構です」

 結局婚姻届は元あった場所に戻され、私たちは酒盛りを再開した。その最中、とうとう彼氏から別れを切り出すLINEがスマホに届いたけれど、エビが隣にいたので泣かずにいられた。

 ……いいんだ。どうせわかってたもん。来年三十を迎える私からの〝早く結婚したいオーラ〟が疎まれていたことくらい……わかってたもん。

 それからお酒もこれ以上飲めないというところまで飲んだ後、私たちは順番にシャワーを浴びて寝ることにした。

 エビは寝室のベッドを私に譲り、自分はソファで寝るのだという。

「服、ありがとう。アンタのTシャツっておっきいから完全にワンピだよ」

 お風呂上りにリビングを覗くと、ソファに寝転んでタオルケットをかけ、雑誌を読んでいたエビが上半身を起こしてこちらを振り向く。すると彼はなぜか顎に手を当て考え込むような仕草をし、眉根を寄せてつぶやいた。

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