旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
相手がエビだからとくに意識していなかったけれど、酔っているとはいえ男性の前でする格好ではない。さすがのエビもちょっと困っているようだ。
いくら目の前にいるのが好きな相手でなくても、男の人だからきっと少しくらい反応しちゃうのかも。
「ご、ごめん。ふざけてただけだから……」
私は少々気まずくなってすごすごとソファから降りる。そしてリビングを出る直前、いまだに怒ったような顔をしているエビに向けて、再度謝る。
「エビ、ごめんね? ……おやすみ」
しかし彼からの返事はなく、私はしょんぼりしながら彼の寝室に引っ込んだ。
寝室はデスクやキャビネットなどのインテリアがダークブラウンの色味で統一されていて、大人っぽい印象だった。
なにげなく近づいた本棚には経営や経済に関する難しそうな本がずらっと並んでいて、つまらなくなった私はすぐにベッドに倒れ込む。
背が高い彼のベッドはキングサイズ。今夜はその広さがなんだか切ないな……。
そこはかとない寂しさを抱えつつも、一週間の仕事疲れと大量に飲んだお酒が効いて、私はたちまち眠りに落ちた。
翌朝は九時ごろに目が覚め、広々としたエビのベッドから身を起こしてうーんと伸びをすると、布団の上にはきれいに畳まれた私の服が置いてあった。
エビ、先に起きて洗濯も乾燥も済ませてくれたのかな……。それとも、もうこの格好はするなって意味で? 視線を落として改めて自分の服装を確認すると、昨夜の気まずさが舞い戻ってしまいぶんぶん首を横に振った。