旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「いるよ、相手」

 不意に、エビがぽつりと言った。私は首をかしげて彼を見つめ返す。

「……絶対いるよ。お前を幸せにしてくれるヤツ。だから必要以上に自虐すんな。あと無理に笑うのもやめろ」

 真剣な調子で諭されて、不覚にも目が潤んでしまった。

「エビ……」

 おそらく友情からくるのであろう彼の優しさが、胸に沁みわたる。

 私、男には恵まれてないけど同期には恵まれてる。こういうときに欲しい言葉を掛けてくれる人って、なかなかいないよ。

「ありがとう。……アンタってほんといいヤツだよね」

 今度は心からの笑みを浮かべてそう言うと、エビは私から微妙に視線をずらしてぼそっとつぶやく。

「褒めてもらえんのはうれしいけど……俺が目指してんのそこじゃねえんだよな」
「え?」
「や、なんでもねえ。パンケーキ、冷めないうちに食おう」

 よくわからないが、気を取り直したようにキッチンに戻ったエビはすっかりいつもの彼に戻っていたので、とくに気にしないことにした。

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