旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
そんな調子で楽しい朝食の時間を過ごした後、せめてものお礼にと私が食後のコーヒーを淹れた。そして再びまったりとダイニングで向き合っていると、エビが香ばしい空気の中にぽつりとつぶやく。
「こうしてるとさ。俺たちが夫婦になるってのも、アリだと思わないか?」
「私たちが夫婦?」
そんなこと考えたことなかったけど……。エビとは職場も一緒で、お互いをよく知っていて……家事も自然に分担できそうだし、なんか普通に想像できるなぁ、その生活。
「……うん、意外とアリだね」
居心地がよさそうだという意味で、私はそう答えた。
「わかった、それがお前の意思な」
あまり真剣に考えていたわけではないのに念を押すようにそう言われて、私は曖昧に頷く。
「うん? ……うん、まぁ」
だけど、夫婦になるためにそもそも必要な恋愛感情が私たちの間にはないわけだから、想像上ではアリだけど、実際にはありえない話だろう。昨日書いた婚姻届も、笑える仕上がりだったしね。