旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「……抜け目ないんだから。なんか考えておく」
どちらにしろ連絡を入れなかったことは怒られるだろうけど、男性とふたりで飲んでいて相手の自宅に泊まったと正直に言うよりは、まだマシだろう。
うちの母、面食いだからたぶんエビみたいな男性はタイプだし……一緒に来てもらえばなにかとうまく切り抜けられそうだ。
エビのマンションを出る前に母に謝罪と状況説明のメールを入れると、【そんなことだろうと思った】という、意外にもあっさりした返事がきた。
「お母さん、そんなに怒ってないみたい」
最寄りの地下鉄の駅まで歩きながら、隣のエビを見上げて話す。
「お母さんは平気でも、お父さんが激怒してる可能性もあるんじゃないの?」
「ううん、それはない。うちの父、無口で存在感薄くて、完全に母の尻に敷かれてるタイプだから」
休日、母に掃除機で「邪魔よ」とつつかれ、切なそうに散歩に出かけていく父の背中を思い出して苦笑した。そんな亭主関白とは無縁の父だが、優しく穏やかで忍耐強い性格は、昔から密かに尊敬している。