旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「でも夫婦仲はいいんだろ? いいじゃん、優しそうなお父さんで」
「まぁね。なんだかんだ、バランス取れてる感じかも」
なにげない話をしながら地下鉄を乗り継ぎ、駅からまた少し歩いて葛西の閑静な住宅街にある私の自宅へ到着した。
玄関にエビを招き入れ、その場で「お母さーん、ただいま!」と大きめの声で母を呼ぶ。間もなくガチャっとリビングのドアが開き、母が出てきた。
「もう理子ったら、あなたもう徹夜してお酒飲む年齢でもないでしょ――」
おかえりも言わずに私への文句をこぼし始めた母だったが、私の隣に立つエビと目が合うなり口を噤み、少女のように頬を赤く染めた。
……完全に目がハートだ。やっぱり、エビを連れてきたのは正解だったみたい。
それからエビがぺこりとお辞儀をすると、母はにっこり微笑み私に尋ねる。
「理子、こちらは?」
「昨日一緒に飲んでた同期のうちのひとり、海老名くん。同い年なのにもう部長なんだよ?」
「はじめまして、海老名と申します」
ハキハキと感じよく挨拶をしたエビに、母はますます笑みを深める。