旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「こんなところじゃなんだしどうぞ中に上がって? お茶でも淹れるわ」
「いえ、僕は理子さんを送ってきただけなので……」
「そう言わずに、ね? 仕事のお話も聞きたいし」
最初こそ遠慮していたエビも強引な母にやがては折れ、我が家に上がることになった。
よしっ。これで私へのお説教、うやむやになった……!
内心ガッツポーズを決め、エビのことは母に任せて私は自室のある二階へ向かう。
「私、部屋で着替えてくるね」
いちおう母にそう声をかけたけど、エビを質問攻めにするのに夢中で聞いているんだかいないんだかわからない。
家の中に父の気配はなく、また散歩に行かされているのかと思うとなんだか父が不憫に思えてくる。夫のことは追い出しておいて、若いイケメンなら喜んで招き入れるって……わが母ながら現金であきれる。
そんなことを考えつつ、自分の部屋で楽なロング丈のシャツワンピースに着替え、ベッドに座ってほっと息をつく。そしてスマホを手にすると、私はまだ返信していなかった例の彼からのLINEを静かに眺めた。
【だいぶ前から理子といることが苦痛になってた。もう続けられない。別れよう】