旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 修復の可能性は微塵もないと宣言するような、取りつく島もない文面。

 昨夜見たときは酔っ払っていたしエビが隣にいたので『あっはは、自然消滅どころじゃなく、バッサリフラれた~』なんて笑っていられたものの、ひとりでフラれた事実に向き合うと、胸がズキズキ痛んで、同時に腹も立ってきた。

「LINEで一方的におしまいにするってさ……どうなのよ、人として」

 終わりの予感はあった。私だって、限界を感じていた。でも、少しは楽しい時間を過ごしたこともあったんだから、せめて電話で別れを告げるくらいの誠意があってもいいんじゃないの?

 モヤモヤしながらも、返信を打つ。このまま無視してもいいのだろうけれど、なんだか気持ちが悪いので、後腐れなく別れたい。

【わかった。今までありがとう】

 送信ボタンをタップしようとした親指の爪が震え、そこにぽたりと涙の雫が落ちた。

 もう……なんで涙なんか出るのよ。泣いたってしょうがないでしょ?

 そろそろエビも母の質問攻めにうんざりしている頃だろうから、早く泣きやんでリビングに行かないと……。

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