旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
涙を乾かすように上を向き、大きく深呼吸をして自分の心をなだめる。そして新しい涙が湧かなくなったのを確認して、立ち上がって部屋を出た。
もともと二日酔いのひどい顔だったから、少しくらい目の周りが赤くたって大丈夫だよね……。
一階に降りてリビングに入ろうとすると、中から「お邪魔しました」というエビの声が聞こえてドアが開いた。
「あれっ? もう帰るの?」
ちょうど鉢合わせた私に、エビは気まずそうに言う。
「ああ。実は昼から用事あって」
「えっ、ごめん。そうとは知らずに送らせちゃって……」
土曜日だし暇なのかと思って、母のおしゃべりにまで付き合わせちゃったよ。
申し訳なくて眉を下げる私をしばらく無言で見つめていたエビは、少し身をかがめると私の耳元で「ちょっと外で話いいか?」と言った。
「うん? いいけど」
なんの話だろう。母に変なことでも言われた?
なぜ外に誘われたのかよくわからないまま、家の門の外でエビと向き合う。エビは心なしか険しい顔で、私をジッと見つめている。