旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 涙を乾かすように上を向き、大きく深呼吸をして自分の心をなだめる。そして新しい涙が湧かなくなったのを確認して、立ち上がって部屋を出た。

 もともと二日酔いのひどい顔だったから、少しくらい目の周りが赤くたって大丈夫だよね……。

 一階に降りてリビングに入ろうとすると、中から「お邪魔しました」というエビの声が聞こえてドアが開いた。

「あれっ? もう帰るの?」

 ちょうど鉢合わせた私に、エビは気まずそうに言う。

「ああ。実は昼から用事あって」
「えっ、ごめん。そうとは知らずに送らせちゃって……」

 土曜日だし暇なのかと思って、母のおしゃべりにまで付き合わせちゃったよ。

 申し訳なくて眉を下げる私をしばらく無言で見つめていたエビは、少し身をかがめると私の耳元で「ちょっと外で話いいか?」と言った。

「うん? いいけど」

 なんの話だろう。母に変なことでも言われた?

 なぜ外に誘われたのかよくわからないまま、家の門の外でエビと向き合う。エビは心なしか険しい顔で、私をジッと見つめている。

< 27 / 151 >

この作品をシェア

pagetop