旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「……なに? 怖い顔して」

 思わずそう尋ねると、おもむろにこちらへ手を伸ばしたエビが、私の目元に親指でそっと触れた。

「お前、泣いたろ」
「えっ……! な、泣いてないよ」

 思わずパッと横を向き、笑ってごまかす。

 バレないと思ったてたのに、エビって結構鋭い……。図星を突かれてドキッとした胸にさりげなく手を置いていると、彼がため息をつくのが聞こえた。

「いいよ強がんなくて。言っただろ? 無理に笑うなって」
「別に、無理してなんか――」

 そう言いかけた瞬間、ぐいっと腕を引かれて、私は気づいたらエビの胸の中にすっぽりおさまっていた。

 え……? なにこれ、どういう状況……?
 
 なにが起きたのかわからず、私は身動きもとれずに瞬きを繰り返す。

「……俺、降りるから」

 私を抱きしめたまま、エビがぼそりとつぶやく。

「え……?」

 待って、なんの話? 降りるって、なにを……?

「〝性別を超越した仲良し同期〟だったか? ……そんな役、降りる」

 切なげにも聞こえる声が耳元で震え、なぜだか胸がギュッとなった。

 それってもしかして……私とはもう友達ではいられないってこと? 嘘、どうして……?

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