旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
その後も、相変わらずさえない生活を送ること数日。今日も協調性のないチームのみんなの顔色を窺いながら仕事をしなければならないのか……。と、朝から憂鬱な気分でオフィスのドアを開けた瞬間だった。
「あ、来たよカニ……! いや、エビなのか、もはや」
私の顔を見るなり、興奮ぎみの梢ちゃんが松下くんにそう話しかける。
「……秋山、先輩に対してエビとかカニとか失礼だろう」
「でも面白いよねえ。旧姓がカニで、結婚したらエビなんて」
ふたりの会話の脇で、萌子さんがのんびりつぶやいた。みんな、いったいなんの話をしているのだろう。カニというワードが飛び交っているから、自分のことを言われている気がしないでもないけど……。
不可解に思いつつもとりあえずオフィスに入っていき、「おはようございます」と挨拶してながら自分のデスクの椅子を引いたそのとき。
「あ、いた、蟹江さん!」
再びオフィスのドアが開き、血相を変えた千葉くんが駆け寄ってきた。
「おはよう、どうしたのそんなに慌てて」