旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 翌朝、実家住まいの彼女を家まで送っていくついでに、彼女の母親を味方につけた。
 母親は現金でわかりやすい性格のようで、俺の家柄について軽く説明してから『理子さんと結婚したいと思っています』と告げると、『玉の輿じゃない!』と言って喜んだ。

 すでにプロポーズ済みで婚姻届の用意もできているが、サプライズで入籍したいのだと嘘の説明をすると、必要書類の用意も彼女に内緒で手伝ってくれた。

 彼女と結婚するためならどんな手段でも使うんだなと、自分の行動に自分であきれたが、後日役所で婚姻届が無事に受理された時には、必ず彼女を幸せにして見せると心の内で誓った。


そして、現在――。理子に結婚の事実を告げた直後である。

 休憩スペースに理子を残して廊下を歩いていた俺は、ひとりになったことで理性を取り戻していた。

 ……社内でたまらずキスするなんて、いくらなんでもやりすぎただろうか。

 しかし、理子が後輩の男に迫られてる姿を見たら、居ても立ってもいられなかった。彼女は俺のものなのに、と驚くほど嫉妬した。

 自分の中にこんな激しい感情が眠っていたなんてな……。

 そんな戸惑いを抱えつつ、所属する統括本部のオフィスに入る直前のことだった。

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