旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「見~た~わ~よ~」
そんな声とともに背後からひょい、と姿を現したひとりの人物がいた。仕立てのよいスーツに身を包んだ、化粧の濃い五十代の女性。その見慣れた顔を前に、俺はついため息をこぼす。
「オバサン……おどろかさないでくださいよ」
「隆臣あんたね、自分の会社の社長に対してオバサンはないって、いつも言ってるでしょ!」
「いや別に、年齢のことを言っているんじゃなく、俺たちの関係性から親しみを込めて〝叔母さん〟と呼んでいるだけなんですが」
「ふん、しらじらしい。今も顔に『うるさいオバサンだな』って書いてあるわよ」
本当にうるさいオバ……いや、叔母である。彼女の名は名取重子。こう見えてベニッシモのトップに立つ女社長で、俺の父親の妹にあたる。
そして俺の父親は、親会社ガンベロの社長、海老名弘忠。将来は俺が、彼の後を継ぐことになっている。俺はいわゆる御曹司なのだ。