旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「……悪いけど、今はアンタのこと考えてる余裕ない。クライアントに追加で希望された企画がどうしても思いつかないの」
どうやら仕事のことで煮詰まっていたらしい。俺のことで悩んでいるわけでないとわかってホッとしたような寂しいような気分だが、相変わらず必死で仕事に向き合う理子の姿にはますます惹かれた。
「どのイベント?」
「こないだ言った、動物園のやつ。ホワイトタイガーの赤ちゃんが生まれた記念のイベントなんだけど、できれば動物園で飼育してる他の動物の魅力も伝えられるような企画も追加してほしいって」
「なるほど。ホワイトタイガーとかパンダとか、目玉の動物がいる動物園はどうしても、そこにばかり客が集中するからな」
頷きながら近くのデスクに腰をもたれさせ、なにかいいアイディアがないかと考えを巡らせる。
「動物好きを売りにしてる芸能人を呼んで、うんちく語ってもらうとか?」
「そりゃ、アンタのところがもっと予算出してくれるならできるけど……今からは無理よ。派手な集客につながるような売れっ子芸能人のスケジュールが、こんなイベント間近に確保できるとも思えないし」
「いつだっけ? そのイベント」
「再来週の頭」