旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 そりゃなかなか時間がないな……。なにかもっといい案はないだろうか。

「……水族館だったら、私とアンタでエビとカニのかぶりものでもすれば済むのにね。実は私たち、苗字が蟹江と海老名なんです~!って、MCでハイテンション貫けば、まぁまぁうけそう。ああいうところのお客さんってわりとあったかい目で見てくれるし」

 正直そんな役はやりたくないが、本当にそんなイベントがあったとしたら、俺は理子のためにひと肌脱いでしまうんだろう。脱ぐっていうか、かぶる……だけど。

「確かに、台本ちゃんと考えれば、そこそこ盛り上がりそうだな。……でもお前、今の苗字はもう海老名だけど」
「こ、こんな時にその話はしないでよ……」

 急にうろたえて視線を泳がせる理子がいじらくてかわいい。これは脈ありだと、内心小躍りした。

「ま、でも今回は動物園なわけだから、エビとカニは使えない。……なら、動物の着ぐるみを借りて、なにかやるってのはどうだ?」
「……なにかって?」
「うーん。寸劇とか?」

 深く考えずにそう口にしたのだが、それを聞いた理子は急に活力を取り戻した目をして「いいかも……」と呟き、パソコンに向かってキーボードを叩き始める。

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