旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「蟹江さん……」
「千葉くん。よかった、出てくれて……」
ホッとして思わず表情を緩ませる私に、千葉くんは通路をキョロキョロ見回して尋ねる。
「……ひとりですか?」
「え? うん。そりゃそうだよ、みんな仕事中だもん。それでね、千葉くんにも一緒に考えてほしいことがあるの。今からでも会社行こう? みんな待ってるから」
「ね?」と念を押すように言って、彼を見上げる。千葉くんはしばらく無言で私を見つめていたけれど、やがてぼそりと呟いた。
「ここまで俺の期待通りに事が運ぶとは思いませんでした」
「え? なに、期待って……」
キョトンとして聞き返すと、千葉くんがずいっと顔を近づけて至近距離で囁く。
「蟹江さんって、マジで隙だらけ」
そして私の手首を突然むんずと掴むと、玄関の中に引っ張り込んだ。
「わっ」
倒れ込みそうになった私を、千葉くんが抱きしめるようにして受け止める。背後でカチッと音がして、ドアがロックされたのがわかった。
ん? なぜだろう。とてつもなく嫌な予感が……。