旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 千葉くんが切羽詰まった瞳で語りかけてくる。しかし私の心にはなんにも響いてこなかった。

 ……確かに、彼の私への想いは本物なのだろう。その気持ちはありがたい。

 だけど、だけどさ。だからって『辞める』宣言をして、私やチームのみんなを振り回してなんとも思わないわけ? そんな交換条件で私を抱いて、むなしくないわけ?

「……見損なったよ、千葉くん」

 私は彼に軽蔑の眼差しを向けた。そして同時に、彼の肩を掴んでいた手の力を抜き、抵抗するのをやめる。

「いいよ、好きなようにして。それで満足するんでしょ? ほら、やりなよ」

 私はシーツの上に突かれた彼の手を取り、胸のあたりに置いた。千葉くんの瞳が戸惑ったように揺れる。

 ……お願い。目を覚まして。あなたには色々思うところもあるけれど、根っから腐ってるわけじゃないって信じさせてよ。

 心の中で語り掛けながら彼の反応を窺っていると、千葉くんは徐々につらそうな顔になり、ぎゅっと目を閉じた。

 そして……。

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