旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「……ごめんなさい、蟹江さん。俺の負けです」
震える声でそう言って、私の体の上からどいた。こちらに背を向けるようにして、ベッドのふちに腰かける。
張りつめていた緊張がほどけ、私はふう、と大きくため息をついた。
こうなることを予想して自ら仕掛けたとはいえ、体の大きさも力の強さも絶対に勝てない千葉くんのことが怖くなかったわけじゃないのだ。
私はゆっくり上半身を起こして、背中を丸めてうつむく彼に声をかける。
「今のこと、ちゃんと反省してるんなら……これから会社に行って、みんなに謝る。それから、気持ち切り替えてきちんと仕事する。わかった?」
「蟹江さん……。でも俺、本当に辞めなきゃいけないくらいひどいことしたのに」
「あぁもううるさい! 許すって言ってんの! さっさと支度して! 私、外で待ってるから!」
一方的にまくし立て、ベッドから下りる。そして部屋から出ようとした時だった。
ピンポーン、と、この部屋のインターホンが再び鳴り響く。
「……誰だろ、すみません、俺出ます」