愛され秘書の結婚事情*AFTER
 しかしそこで「あ、でも」と、別の声が上がった。

「秘書課の子の話では、佐々田さんと相手の人……塚川ってイケメン君。同郷の幼馴染らしいよ?」

「え、マジ?」

「じゃああのイケメン君と桐矢常務のお母様の関係は?」

「ていうか、キス事件から大分経ってるし。塚川君の件とは無関係じゃないの」

「いやいや、ちょっと待って!」

 そこでまた、別の一人が声を上げる。悠臣が営業部にいた頃からのベテラン社員、吉岡しのぶ(よしおかしのぶ)という女性社員は、慎重な顔つきで皆の顔を見回した。

「とりあえず、佐々田さんは今もあのエンゲージリングを付けたままだから、イニシャルH氏との婚約は継続中なはずだよ。で、あの塚川君は、本当にただの幼馴染なのよ。でも彼はひそかに、佐々田さんを好きだった。彼女が婚約したと聞いて、彼女を奪うために上京して来た。でも冷たくあしらわれて、腹を立ててキスをした」

「おお、なるほど」

「確かに、そこまでは辻褄が合ってるわ」

 第二のシャーロックの言葉に、また皆が真剣な表情で聞き入る。

 皆の同意を得られ、小五と中一の息子がいるしのぶは、意気揚々と話を続けた。

「で、昨日の件だけど。H氏を佐々田さんに紹介したのが、桐矢常務のお母様だったわけよ。あの日、常務が怒った顔で佐々田さんを外に連れ出したのは、彼女を厳重注意するためだったんじゃないかな。会社で他の男とキスなんかして、H氏にバレたら破談だぞ、って。だけど結局、仲人をした常務のお母様にバレて、昨日はその件で呼ばれてしまった、と。……どう、この仮説」

「おおお……」

「確かに、その説なら一切矛盾はないわ」

 さっき第一の仮説を立てた加代も、心底感心した顔で頷いた。

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