恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい
「それで、誰に負けないの?」

 繰り返された質問に恋歌は内心ため息をつく。

 放っておいてくれないかな。

「ええっと、先輩はクリスマスの予定とかって決まってるんですか」
「え? 私?」

 目に見えてわかるくらいひとみが動揺した。

 あ、この人予定ないな。

 きっと自宅でぼっちなクリスマスを過ごすのだろう。

 可哀想に。

 表には出さずに憐れんでいるとひとみが言った。

「も、もちろんあるわよ。あるに決まってるじゃない」
「……」

 先輩、嘘がバレバレです。

「イブはね彼の部屋で二人っきりのクリスマスパーティーをするの。で、クリスマス当日はお互いのプレゼントを買いに行くの」
「……」

 そっか、そんなクリスマスがしたいんだ。

 けど、彼氏がいなければそれも無理だよね。

 恋歌はにこりと微笑んだ。

「わぁ、さすが先輩。素敵なクリスマスになりそうで羨ましいです」

 ホント、そんなクリスマスなら良かったのに。

 まあ、来年に期待ってことで。

 ひとみが聞いてくる。

「あなたこそどうなのよ。予定はあるの?」

 痛いところを突いてくる。

 予定なんてある訳ない。

 村田への作戦のために誘いは全て断っているのだ。

 そう、村田のために……。

 私がその気になればクリスマスの予定なんて分単位で埋まってしまうのに。

 そこを彼はわかっているのだろうか。

 ……わかっていないからこっちは苦労しているんだっけ。
 
 
 
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