【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第17話
アタシは、章介との結婚生活が破綻した後、しばらくの間三原市の実家でひっそりと暮らしていた。

しかし両親は、アタシが結婚をしてくれないと困る困ると言うていたので、また再婚をすることになってしまった。

アタシは、2度も結婚生活が破綻をして気持ちがヒヘイしているから、再婚なんぞイヤなんだけど…

父は、アタシに『相手を選び間違えたことはあやまるから…今度は親ごさんは立派な人で、相手の人は働き者のサラリーマンだから、大丈夫だよ…』と何度も何度もしつこく言うてはった。

アタシは父が『今度は本当にまじめな人で、家庭を大事にできる人だよ。ワシが保証するから…』と言うたから、仕方なく再婚することになった。

2016年6月の第1日曜日のことであった。

アタシは、父の知人からの紹介で父の知人の知人が暮らしている高松市円座町の家の次男さんのひろむさん(31歳)とお見合いをして、お見合いの2日後に再婚をした…

けれど、婚姻届は出さなかった。

ひろむさんは、高松市多肥上町にあります済生会病院の外科の若手主任医師で年収は900万円であった。

アタシは、お見合いを引き受ける気はなかった。

けれど、アタシの両親が『ひろむさんの親御さんはまじめなサラリーマン風の人だから大丈夫だよ。』としつこく言うので、返す言葉がなかった。

両親が言うてはるきちんと親とは、なにを基準にして言うてはるのだろうか…

『両親がずっと平社員で通してきた人だから』『両親は小さいところからコツコツと積み上げて努力してきた人だから』…

親御さんの教育が行き届いている中で育ったから大丈夫だと言う言葉は、大ウソだから信用できない…
と思っている。

たしかに、ひろむさんは、誠実でまじめでまっすぐな性格ではあった。

けれど、ご両親がお見合いの席でペラペラペラペラペラペラペラペラ…と自慢話ばかりをしていたので、ひろむさんの第一印象は激悪である。

そういうことで、3度目の結婚生活も市役所に婚姻届なんか出さなかった…

お見合いから2日後に、ふたりは高松市円座町にありますひろむさんの家でひろむさんの両親(以降義父母)とシングルきょうだいのひろかずさん(以降義弟)と女子大生のしほさん(以降義妹)と同居を始めた。

ひろむさんの家は、ことでん円座駅から歩いて5~6分のところにある一戸建てで2階建ての大きめの2・5世帯住宅である。

同じ屋根の下で、義父母と義弟と義妹と一緒に同居をしていたけど、家ではシングルきょうだいの深刻な問題を抱えていた。

39歳の義弟は、志度にあるタダノ鉄鋼の工場に勤務をしているけど、今も未婚のままである。

義弟は、義父母が遅くに生まれてきたひとり娘の義妹のワガママが原因でだいぶガマンを強いられていた。

義妹は、幼いときから義父母にたくさん甘やかされて育ってきた。

ほしい物があれば何でも買い与えていたし、高校の学費も大学の学費も全部出していた…

何から何まで両親が与え続けていたので、ここへ来て家庭内は危険な状況になって行こうとしていた。

義妹は、せっかく入学できた女子大を今も休学の状態が続いていたのに、義父母は何も言わない…

時は、6月の第2火曜日のことであった。

ダイニングのテーブルに、家族6人が集まって朝ごはんを食べていた。

「ごちそうさまでした。」

まず、ひろかずさんがごはんを食べ終えて、志度の工場へ行く。

続いて、義弟が『今夜は夜勤だから。』と言うて、出勤をした。

アタシも、ごはんを食べ終えた後高松市内のバイト先へ行った。

テーブルには、義妹と義父母が残っていた。

義妹と義父母は、こんな会話をしていた。

「おとーさん、おかーさん…お願いがあるのだけど…」
「何だよぉ、またお金のことなのか?」

義妹がお願いを言う前に、義父が多少あつかましい声で言い返したので、しほさんはふてくされていた。

「何よぉ…アタシが言う前にどうして矢継ぎ早に言うわけなのよ?まだ何も言っていないわよぉ。」
「この間、こづかいをやったばかりじゃないか…これで今月何回目になると思っているのだ!?」
「どうしてあつかましい声で言うわけなのよ!?」
「しほ!!」
「おとーさん…」

義母は、義父を止めてから義妹に言うた。

「しほちゃん…おとーさんもおかーさんも…そろそろしほちゃんに自立をしてほしいと思って言っているのよ…いつまで大学を休学するつもりなの?大学に復学をするか、きちんとした事業所で職場実習を受けるのか…このままだと、しほちゃんがダメになってしまうのよ。」
「そんなことくらい分かっているわよぉ。」
「だったら、大学に戻るかおとーさんの知り合いが経営している会社で職場実習を受けるのか…ふたつしかない…だいぶ甘やかすだけ甘やかしてきたから…しほには、きちんと自立をした暮らしを送ってほしいのだよ!!」

義父は、ブツブツ言いながら、勤務先の会社へ行った。

義母も、同時にパート先のマルナカ(スーパーストア)へ行きましたので、義妹が家に残っていた。

義妹は、みんなが出かけている間に家の預金通帳を勝手に持ち出しまして、銀行に行って、現金を引き出した後、香東大橋の下に行って、カレシと密会をしていた。

義妹のカレシは、親のクレジットカードを勝手に使って、オンラインゲームの高額なアイテムを買っていたことが親にバレたら怖いので、義妹に高額なアイテムを買った代金分の現金をムシンしていた。

「わりーな…助かったよ…これでオヤジにばれずに済むよ。」
「もう許してよ…あんたが親のクレジットカードを勝手に使ってオンラインゲームで高額なアイテムを買うことを繰り返してばかりいるから、アタシは困っているのよ!!あんたね!!人の話を聞いているの!?」
「だって、おもしろいのだからしょーがないじゃん…オンラインゲームがなかったら生きて行けないのだよ。」
「もうこれで最後にしてよ!!まともに生きて行きなさいよ!!ハローワークに行って面接の申し込みをして、採用をもらいなさいよ!!」
「分かったよぉ…そのうちハローワークに行くから…かんべんしてくれよぉ…」

義妹のカレシは、義妹にこう言った後、その場から立ち去った。

事件はそれから数日後に発生した。

義妹は、カレシにオンラインゲームの高額なアイテムを買った代金分の現金を返してほしいとお願いしたのに、カレシが友人にカネを貸したと言うたので、ひどい大ゲンカを起こしたあげくにふたりは別れてしまった。

義妹は、夜7時を過ぎても家に帰ってこなかった。

しかし、家では家の預金通帳がひとつなくなっていたので、大騒ぎになっていた。

降りが悪いことに、この時にアタシが家に帰って来た。

義母は、アタシが預金通帳を勝手に持ち出したとわめいていたので、アタシはブチ切れていた。

「冗談じゃないわよ!!どうしてアタシが勝手に家の預金通帳を持ち出したと決めつけているのよ!!アタシは知らないと言ったら知らないのよ!!」
「としこさん!!まだこの期におよんでいいわけを言うのですか!?ひとの家の預金通帳を何だと思っているのですか!?」
「キーッ!!一体何なのよ!?アタシは、家の預金通帳のことについては知らないと言ったら知らないわよ!!」
「ンマー!!どう言うことなのかしら!!としこさん!!」
「やめるのだ!!」
「止めないでよ!!としこさんが勝手に家の預金通帳を持ち出したのよ!!」
「落ち着きなさい!!」

義父は、必死になりまして義母を止めていたけど、義母がひどくゲッコウしていたのでどうすることもできなかった。

そんな時に、深刻な事件が発生した。

深夜11時50分頃のことであった。

国分寺町にある森林公園の奥深いところで事件が発生した。

「やめて!!離して!!離してよ!!」

白のブラウスと赤のスカート姿の義妹が、おそろしい覆面をかぶって派手なシャツを着ている男に急に捕まって、森林の奥深いところに連れて行かれて、力任せに倒されて犯された。

「助けて!!おとーさん!!おかーさん!!ギャー!!ギャー!!」

森林に義妹の叫び声と布が思い切り破れる音が聞こえていた。

(ビリビリビリ!!)

「ギャー!!ギャー!!ギャー!!」

事件発生から二時間後、しほさんはボロボロに傷ついた状態で亡くなった。

明け方5時過ぎに、現場の森林公園に香川県警のパトカーがたくさん止まっていた。

香川県警の捜査1課の刑事たちと鑑識警察官たちが現場検証を行っていた。

この時であったが、捜査1課の若手刑事がおそろしい覆面を発見したと言うたので、50代半ばの警部は容疑者が分かったぞと言うて早めに容疑者を検挙するようにと指示を出した。

現場から北へ一キロ先にある公衆トイレの個室にて…

おそろしい覆面をかぶっていた男が、ひどくおびえていた。

おそろしい覆面をかぶっていた男の正体は、2年前の夏の終わりに壬生川から家出をして行方が分からなくなっていた桂一郎さんだった。

まさか…

丹原の禎二さんの奥さんがレイプされて亡くなった事件や河原津で信金の女子職員さんが集団レイプを受けて亡くなった事件のリーダーって…

この時、新たな恐怖がアタシに襲いかかろうとしていた。
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