【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第18話
ところ変わって、高松西警察署の霊安室にて…

霊安室では、亡くなったしほさんのカレシがいて、しほさんのそばでしくしくと泣いていた。

(ガチャッ!!)

その時であった。

いかつい顔をした男性の刑事3人が入ってきて、カレシに取調室に来いと言うて、無理やり取調室へ連れて行った。

香川県警の捜査1課は、義妹がレイプされてボロボロに傷ついて恥ずかしい姿で亡くなった事件でカレシが容疑者だと断定したので、カレシは即刻逮捕とあいなった。

取調室に連れて行かれたカレシは、レイプ事件のことは知らないと言うて否認していた。

けれど、刑事たちはカレシをシツヨウに問い詰めていた。

「あんたね!!どんなに否認をしようとも調べはついているのだよ!!あんたね!!親のクレジットカードを無断で使ってオンラインゲームの高額なアイテムを買ったことがバレたら怖いのでしほさんにカネのムシンをしていたが、しほさんに断られて、かっとなってシツヨウにレイプしてしほさんを死なせたのだ!!おそろしい覆面をかぶった男の正体はあんたなのだろ!!」
「ちがいますよ!!オレはあの事件の夜は、アパートに帰っていたのだよ!!」

(ガチャッ!!)

この時に、鑑識の結果の書面を持ってきた若手の刑事が、おそろしい覆面から採取されたDNAがしほさんのカレシのDNAと一致したと言う報告をはたにいた刑事に報告をした。

刑事たちに凄まれたカレシは、泣く泣く容疑を認めて観念した。

証拠が不十分なのに、香川県警の捜査1課の刑事たちは、トントン拍子で事件解決へ向けて走っていた。

県警の本部長は、彼らが証拠不十分で捜査をすすめていることをわかっているのに、彼らをとがめずに放置していた…

事件は、コントンとなって行こうとしていた…

その頃であった。

家の預金通帳を勝手に持ち出した張本人が殺された義妹だったので、アタシは無実だと言うことが確定した。

けれど、アタシは家のモンに濡れ衣を着せられたので、クソッタレのひろむの家の親族たちをのろい殺してやると激怒していた。

アタシは、義父母に『よくも濡れ衣を着せたわね!!』と怒鳴りつけて、義父母の顔を平手打ちで激しく叩いてケガを負わせたあと、ボストンバッグと赤茶色のバッグを持って家出をした。

アタシが家出をしたので、義父母がパニックになっていた。

アタシに濡れ衣を着せただけではなく、義妹を甘やかすだけ甘やかして、高額な品物を買い与えたり高校と大学の授業料に使うなどしていたことが問題になったので、クソッタレがふざけるなと義父母に大声で怒鳴りつけて大ゲンカを起こした。

「ひろむ…許してくれ…この通りだ…」
「ふざけるなよ!!あんたたちはしほを甘やかすだけ甘やかしたのだから許すことはできない!!しほを甘やかすだけ甘やかしておいて、としこを追い出したのだからな!!あんたらのことは絶対に許さないからな!!」
「悪かった…許してくれ…しほは…たったひとりの娘だから…かわいくてかわいくて…」
「ふざけるなよ!!」

クソッタレは、桐のタンスの中に入っていた琉球絣(りゅうきゅうかすり)6反と高価な品物を次々と取り出していた。

「何をするのだよ!!やめてくれよ!!」
「ふざけるな!!妹を甘やかすだけ甘やかしたのだから!!何もかもを取り上げてやる!!」

クソッタレは、怒り心頭になっていたので、家の中にある高価な品物をひとつ残らず取り上げていた。

アタシとクソッタレの結婚生活は、1ヶ月もたたないうちにあえなくご破綻となった。

2016年7月1日のことであった。

アタシは、クソッタレの家を飛び出した後、市内塩上町のNTT香川支店の近くにあるマンスリーアパートに移り住んだ。

アタシは、ここからバイト先である中央通りのマクドと香川県庁前のファミマに通うことにした。

アタシは、クソッタレのひろむの家の親族全員を許すことができなくなっていた。

クソッタレも、家を飛び出した後に病院の宿直室で仮住まいを始めていた。

家に残された義父母と義弟は、この先どうしてよいのか分からないとパニックになっていた。

その頃であったが、アタシとクソッタレの結婚生活が破綻しそうになっていると聞いた武方さんがクソッタレの家にやって来て、話し合いをしていた。

武方さんは、壬生川で経営していた運送会社が経営破綻をして、家がなくしたので、一家は仏生山町にある奥様の実家に転がり込んでいた。

武方さんは、アタシの父に頼まれてアタシのお見合いを引き受けていた。

とうぜんのごとく、お見合い結婚が破綻をしたら困るとあせっていたので、アタシがバイトをしているファミマへ行った。

時は、夜8時頃であった。

アタシが駐車場にあるゴミ箱の整理をしていた時に、武方さんがやって来た。

武方さんは、アタシにどうしてクソッタレと離婚をするのかと言うたので、アタシは武方さんにあつかましい声で言い返した。

「武方さん!!アタシはね!!クソッタレのひろむと離婚をしたら女ひとりで生きて行くことに決めたから…再婚したくないと言うてはるアタシにどうして再婚をすすめたりしたのかしら!?アタシは思い切りキレているのよ!!武方さん!!アタシは今バイト中なのだから帰ってくれるかしら!!」
「としこさん、ひろむさんのご両親はすごく困っているのだよぉ…しほさんが亡くなった悲しみがまだ深いのだよぉ…預金通帳のことについてはあやまりたいと言っているのだよぉ…としこさんには、ひろむさんのご両親の泣き声は聞こえないのかなぁ…」
「アホみたいだわ…なにが『ひろむさんのご両親の泣き声は聞こえないのかなぁ…』なのかしら…あんたね!!クソッタレの家の肩を持つ気でいるからあんたのことは一生うらみ通すから!!クソッタレの両親はアタシが預金通帳を持ち出したと勝手に決めつけてわめき散らした上に、アタシに出て行けと言って追い出しておいて、都合が悪くなればやっぱり家に帰ってきてほしいなんてムジュンしてはるわよ!!アタシはあなな自己チューのクソッタレの家には帰らないから!!ああ!!思い出すだけでもはぐいたらしく(あつかましく)なるわね!!」
「としこさん、お願いですからそんなに怒らないでくださいよぉ…本当にひろむさんのご両親は泣いているのですよぉ…」
「はぐいたらしいわねあんたは!!もとはと言えば、クソ義妹を甘やかすだけ甘やかしたことが原因であななことになったのでしょ…あんたも子を持つ親なんだからその辺のことは理解してはるのでしょ!!」
「分かってますよぉ…だけどねとしこさん…」
「アタシにどうしてほしいと言いたいのかしら!?」
「どうしてほしいって…としこさんの手料理が食べたい、みそしるを炊いてほしい、目玉焼きをやいてほしい…」
「イヤ!!キッパリと断るわ!!あななことを言うのは都合が悪くなったらやっぱり帰って来てくれと言う貧弱な男のショウコなのよ!!アタシは家庭科が死ぬほどイヤだから料理せえへんけん!!武方さん!!」
「としこさん…ひろむさんは一度離婚の経験があるのだよ…」
「あんたはひろむがどうして離婚をしたのかがよく分かってへんけん、そななクソたわけたことが言えるのよ!!クソッタレのひろむはお嫁さんにきつい暴力を加えて大ケガを負わせて傷害罪で逮捕された前科があることをなんでアタシに隠していたのよ!!ああ、それだけじゃないわよ!!亡くなったクソッタレ義妹がわがままな子になってしまったのも、義弟が結婚できないのも、結局は虫ケラ以下のモンペア義父母の育て方が悪いからそのようになったのでしょ!!あんたもね!!人のバイト先に突然フラりとやって来て、ゴタゴタゴタゴタ言いに来ないでよ!!帰ってよ!!帰らないとケーサツを呼ぶわよ!!」

アタシは、武方さんに思い切りキレた後に奥の部屋に逃げて行った。

その頃、クソッタレもアタシと離婚をすることを決めていたので気持ちがますますかたくなになっていた。

この時、ふたりの夫婦関係は危険水域に突入していたので、関係修復はもはや不可能となっている。
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