【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第23話
8月27日のことであった。

とうとう義弟は、ガマンの限度を大きく越えたので、工場長さんに対して『オレをここへ連れてきたのはオドレか!?よくもオレたち従業員さんたちを食い物にしたな!!仕返しをしてやる!!』と言うて辞表を叩きつけたあと、工場長さんをボコボコに殴って出て行った。

クソッタレも、医療法人済生会あてに辞表を送りつけた後、行方不明になってしまった。

そして、その日の午後のことであった。

武方さんが、アタシがバイトをしている中央通りのマクドにやって来て、ひろむが行方不明になったことを告げに来た。

アタシは『もしひろむが立ち寄ることがあったら知らせるわ。』と武方さんに言うた。

その後、アタシは武方さんにこう言うた。

「アタシね…来月いっぱいでバイトをやめて三原に帰ることにしたから。」
「三原に帰るのか?」
「もう結婚なんてコリゴリだわ…アタシね…女ひとりで生きて行くから…あと…アタシは、両親のそばについてあげたいの…」
「としこさんが、そのようにしたければ…としこさんの思うようにすればいい…」

武方さんは、アタシにこう言った後、マクドを出て行った。

武方さんとは、この日を最後に音信不通になった。

そして、8月28日の朝9時頃のことであった。

(ドンドンドン!!ドンドンドン!!)

円座町のクソッタレの家に、入江さんが血相を変えてやって来た。

応対は、義父母がしていた。

「あら入江さん、どうかなさいましたか?」

義母はキョトンとした表情で、何があったのかを入江さんに聞いてみた。

入江さんは、血相を変えて義父母に志度の工場で深刻な事件が発生したことを伝えた。

前の日に盗難車の届けが出ている黒のトヨタポルテが、志度の工場で暴走した事件が発生した。

車は、工場の従業員さんが3人はねて、守衛室に衝突した。

その後、男は車から飛び出して刃渡りのするどいナイフで出勤してきた工場長さんを刺して殺したあと、刃物を振り回して、出勤してきた従業員さんたちを次々とナイフで切りつけて、20人の従業員さんたちが殺してしまった。

工場は今、香川県警のパトカーとさぬき市の消防本部の車両がたくさん入ってきたので、緊迫した状態になっていました。

この事件で、工場長さんと少なくとも20人以上の従業員さんたちが亡くなった。

少なくとも100人前後の従業員さんたちも、大ケガを負っていた。

このうち、従業員さんひとりが心肺停止の状態になっていた。

香川県警の捜査1課の刑事は、犯行に使われたトヨタポルテを捜索していた。

若手の刑事が、車のシートからマゼンタの箱を見つけたと言うた。

箱の中に、合成マヤクが入っていた…

工場からの連絡で、容疑者の男は義弟で薬物を使用したあとに暴走運転をしていたことが入江さんに伝わった。

義弟は、事件を起こした後に刃物を捨てて逃走をしたことが伝えられた時、入江さんはひどく気落ちをしていた。

「ああ!!情けない…せっかく24年かけて仕事を1から教えて、一人前の工夫になれるようにと育ててあげたのに…車を盗んで、薬物を使って、通り魔事件を起こした…もう失望した…」

義父は、ひどくうろたえていた。

義母は、義父をに激しくなじっていた。

「あなた!!ひろかずがこうなったのはあんたがいけないのよ!!しほを甘やかすだけ甘やかして!!ひろかずの貯金は全部しほのわがままのために使われたのよ!!しほの高校の授業料も入学金も…みーんなひろかずにがまんをさせた上で…あんた!!ひとの話を聞きなさいよ!!」
「何だと!?たったひとりの娘に何てことを言うのだ!?」
「あんたがしほのことを甘やかすだけ甘やかしたから…しほがレイプされて亡くなったのよ!!何がたったひとりの娘なのよ!!」
「だまれ!!オドレこそとしこさんを追い出したくせに何を言っているのだ!?」
「だまれはあんたよ!!」

義父母は、激しい口調でののしりあいをしていた。

その時に、義母が左の胸を押さえて倒れてしまった。

「どうしたのだ…おい…どうしたのだ…しっかりしろ!!」

義母は、ドクターヘリで三木町にある大学病院に救急搬送されたが、病院に着く数分前に心不全で亡くなった。
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