いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
言いながらも真衣香の頭を撫で続ける八木を見ながら坪井が不機嫌そうな声を出した。
「八木さん、後輩に触りすぎっすよ~。あ、立花もう終われそうなの?」
立ち上がっていた真衣香を見てだろう。
坪井が真衣香にそう話しかけた。
「だ、大丈夫だよ。今着替えに行こうとしてたとこだから!」
しかし真衣香は、咲山と並んでいるであろう坪井の方を見られないまま返事をして。
ドアの方にドアの方に小走りで駆け寄る。
「急がなくていいよ、一階で待ってようか?」
通り過ぎる前に坪井がそう言った。
『一階で待ってようか?』は、恐らく従業員の出入り口のことだろう。
ここで八木と咲山と、そして坪井。 この三人で待たれるよりは幾分マシだろうと思い真衣香は頷いた。
(八木さんと咲山さんだと会話の流れが何となく心配だし……)
と、思ってしまったことは八木にはもちろん秘密だ。
振り返り、八木に「お疲れ様です」と言い残し更衣室へと急ぐ。
けれどその足取りは何となく重い。
無理をしているのかもしれない。
意地になっているだけかもしれない。
行かない方が、いいのかもしれない。
かも、しれないじゃない。
きっとそうなのだろうけど。
『あんた頑固なとこあるからなぁ』
今の真衣香を見たならば、優里は多分、また、そう言うんだろう。
数日前の友人の声が頭の中、何度も繰り返される。
――金曜日。
明日は休みだというのに、とてもじゃないけど喜べていない現状が、やはり真衣香の胸をチクチクと痛めつけてきた。