いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「好きって、それだけは言ってくれないの。気持ちも言葉も返してくれないんだ。だから私、涼太を試した。本気じゃないのに、別れ話切り出しちゃって。まぁ案の定引き留めてなんてくれなかったけどね」
「わ、私……」
震える声を出した真衣香の足下で、ガシャン、と何かが落ちて割れた音がした。
手に持っていたファンデーションを床に落としてしまったようだ。
粉々になったそれを見て咲山の笑顔は深くなる。
嬉しそうに、満足そうに。真衣香に言い放った。
「あー、やっぱり当たっちゃった?」
真衣香は何も答えることができない。
「やだ、マジで? そっかぁ、あはは、言われてないんだぁ、あんなにお姫様扱いされてても?」
「涼太、こんな真面目そうな子で遊ぶとかタチ悪すぎる〜」と。口元を歪ませ、それはそれは愉快そうな笑い声を上げる。
その、悪意に満ちた笑い声で真衣香を捕らえる咲山に。
真衣香は、何も言えない。
(だって……)
「あーあ、可哀想〜。 やっぱ立花さんだって特別じゃなかったんだぁ。好きって、言われたことないんだね、みんな一緒だ」
事実だから。
ほんの少しの、けれど真衣香にとっては特別な日々を思い返して。
どれだけ彼の、笑顔を、声を、思い返してみても。
言われたこと、なかったから。
『好き』だと。
その言葉を、口にしていたのは、自分だけだったのだ。