いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


てっきり引き留めると思ったが、咲山はすんなりと了承し、上機嫌な様子で真衣香たちについて来ようと携帯と財布を手にした。

カウンターを横切る時に、あ。と小さく声を上げ、真衣香は坪井の袖口を掴み小さな声で聞いた。

「お、お金ってどこで払えばいいの?」

「はは、お前ってほんと、俺のこと見上げてくる顔可愛いよね。うん、金はもう払ったから大丈夫だよ」

坪井も小さな声で、耳元に唇をつけて答えてくる。可愛い、なんて言われ、すぐに舞い上がってしまうあたり単純だなと思う。

とは、言っても、いい大人が奢られっぱなしでは良くないじゃないかと声をあげた。

「ダメだよ、前も坪井くんに出してもらって」

目を細め、頭をくしゃっと撫でられた。

「うーん。俺、彼女には金出させたくない奴みたいなんだよね。だから慣れよう、な?」

言葉のひとつひとつが、真衣香を嬉しくもさせ不安にもさせる。
恋人という存在は、本当に不思議だ。

「えーっと、私もいるんだけど。いい感じで酔ってるからって、イチャつくのやめてよね」

わざとらしい咳払いのあと、咲山が言って、坪井の腕をグイッと引っ張る。

「じゃ、マスター、涼太たち下まで送ってくるね。すぐ戻るから〜」

「うおっ、ちょ、夏美引っ張んなって、おい」

「立花!」と、咲山に引っ張られていく坪井が真衣香を呼んだ。
慌ただしくマスターに軽く会釈をして「また来ます、ご馳走様でした」と言い残し二人の後を追う。

背中から、マスターの、慌ただしい奴らだな。の声と、ため息が聞こえた。



小さなエレベーターは薄暗い灯りで、狭く、大人三人で乗れば密着してしまう。
一番最後にたどり着いた真衣香は急いで乗り込み、一階のボタンを押して扉をしめた。
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