いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
すぐにエレベーターは動き出し、ガタガタっと音を立てながら下降する。
機械音だけが響く中、咲山が言った。
「ねぇ、涼太、今度の週末くらいには営業も落ち着くんじゃないの? 高柳さんにチラッと聞いたら言ってたよ」
「ん? まぁ落ち着くんじゃない?」
二人の会話が聞こえるけれど、真衣香は振り返るスペースも。そもそもそんな勇気も持てないので前を向いたまま聞き入る。
「じゃあ、また来週遊ぼうよ。 立花さんとさっき話してたんだけど、別に涼太と私が二人で会っても構わないって」
さっき話した……とは、トイレでの会話のことだろうか? 来週の話をした覚えはもちろんないけれど、要約すれば真衣香に身の程をわきまえて引け、と言っていたのだろうから。
(そういう話に繋がるのかな)
どう答えるのだろうと、ハラハラしていると背後から真衣香の顔に手が添えられた。 そのままグイッと上を向かせられる。
その先には、真衣香を見下ろす坪井の顔があった。
薄暗いエレベーターの灯りだけれど、ジッと見つめられるとさすがに恥ずかしい。
「え、つ、坪井くん……? どうしたの?」
「話したの? 俺と咲山さんが二人で会ってもいいって? お前抜きで?」
しかめ面で、低い声。
少し怒っていそうな、不機嫌そうな様子を感じる。
「え? えっと、そんな言い方はしてないけど……その」
坪井の逸らされない視線と、見えはしないはずの坪井の後ろにいる咲山の苛立つ瞳を想像して、どう発言すべきか定まらず口ごもっていると「うんうん、了解」と、坪井の満足げな声。
同時に、チン。と音がして、エレベーターが一階に到着したことを知らせる。