いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
座らされてしまったばかりだが、こんなことで早退をしてしまっては、まるで失恋で落ち込んで帰ったみたいじゃないか。
(そ、そんなのダメ、嫌だ)
せめてきちんと謝りたくて。踏ん張って立ち上がった真衣香だが、チカチカと視界に火花が散った。
かと思えば、景色が大きく揺れる。次に、膝の辺りにヒリヒリとした痛みを感じた。
どうやら、フロアの固いカーペットに膝をついてしまったようだった。
「お、おいおい、マジか」
慌てた様子で八木が真衣香を抱き起こそうと、再び腕のあたりを掴む。
転んだときの弾みで椅子にぶつかった音が響いたのか。パーテーションで区切られた人事部から何人かの女子社員が顔を出しているのを視界の端が捉えた。
(ど、どうしようあり得ない、目立ってる)
頭の中ではぐるぐると考えが巡るというのに、身体が言うことを聞かない。
「おい、嫌かもしれないけど、嫌がるなよ」
謎の前置きを、八木が耳打ちする。何のことかと思った次の瞬間、両脇に手を入れられ、ひょいっと子供を抱き上げるように持ち上げられる。
(え、え……!?)
心の中で悲鳴を上げる。
もちろん実際にも叫びたいほど恥ずかしいけれど、大きな声を出す気力も体力も、どうやら今の真衣香には残っていないようで。
掠れがひどくなってきた声でなんとか呼びかけた。
「や、八木さ……」
抱き上げられた身体はそのまま右肩に担がれる。
「変なとこは触らんから、叫ぶなよ」
と、背中と膝裏に手を当てられる。
確かに触られたくないところが、避けられているような気がした。
背後でざわざわと、主に女性陣の声が聞こえるから、騒がれていることはわかる。
何に騒がれてしまっているのかも、もちろんわかる。
直視する勇気がなくて目をギュッと瞑った。