いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「応接室とか、そのへん。ソファあるとこ連れてくから、とりあえず。もし課長が先に戻ったら伝えといてくれるか」
八木が後ろにいる、きっと人事部の誰かにだろう。そう伝えて、そのまま歩き出しフロアを出て廊下を進みだした。
一階フロアを独占する賑やかで大人数の営業部とは違い、二階は比較的静かだし自分たちのフロアからみんな基本的に顔を出さない。
だからこの状況でも何とか助かっているのではないかと思う。
エレベーターのすぐ近くにある応接室に入り、八木がそっと真衣香をソファの上に降ろしてくれた。
失礼ながら八木にはガサツな印象を持っていたのだが、予想を裏切る優しい手つきだった。
そうして、立ち上がるまでの動作の間、まるで流れ作業のように。八木は真衣香のオフィス用サンダルをゆっくりと脱がせた。
「先輩に……こんなことさせて、す、すみません……」
「くだらんこと謝るな。とりあえず寝とけ……って、なぁ。この状態じゃ歩けねぇだろ。お前実家遠いんだっけ?」
「車で1時間くらいかなと……」
「じゃあ親はこれねぇしな」とぶつぶつ呟く八木を横目に目がうつらうつらと閉じかけていく。朦朧としていく意識を何とか堪えさせるため、拳を作って自分の頭を殴ってみた。
「い……っ!痛い……」
「アホか何してるんだ」
「なんか寝てしまいそうだったので……」
答えた真衣香に、はは、と八木は短く笑って言った。
「安心しろ、いつも頑張ってる奴がたまに抜けたくらいで誰も怒らねぇよ」
励ますような物言いに朦朧としていた頭が少し冴えてきたように感じる。
「……え?」
「この間言ったろ、お前が営業と揉めてる時に。言わせねぇようにするんだよって、文句な」