いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
ケホケホと、軽く咳き込みながら抗議するも八木は聞こえていないかのように続けた。
「お前みたいな奴が、こうなるまで坪井は何やらかした」
急に真面目な声に変化したものだから真衣香は驚いて八木を見上げた。
額に触れる手が影となって表情がよく見えないのだが……どことなく、真衣香を見下ろす八木の表情が険しいように見える。
「お前の勘違いだか何か知らねぇけど、あいつならもうちょいうまくやれそうなもんだけどな。遊ぶにしろ捨てるにしろ」
「どういう、こと……ですか?」途切れ途切れに聞いた真衣香を観察するように眺めて、八木は更に言う。
「これまで躊躇しなかった奴がブレるとクソほど使いもんにならねぇよって話だ」
ソファの肘掛に座った八木が「ま、お前にはわからんだろ」と意地悪に笑ってペチっと何だか間抜けな音を響かせた。
撫でていてくれたはずの額を軽く叩かれたのだ。
そんな八木の動作とほぼ同時、応接室のドアが突然開かれ――
「……あ、いた、立花! 大丈夫!?」
聞こえてきた少し慌てた様子の声に、思わず身体が強張った。
ワンテンポ遅れて、それよりも少し低くなった声が同じ人物から続く。
「……と、八木さんも、いたんですね」
「噂をすれば何とやら、だな。いちゃ悪いかよ」
八木がその声の主に、やたらダルそうな声で答えている。
ドクドクとうるさいくらいに心臓が脈打って、逃げ出したいと、まるで頭に訴えているように思えた。
真衣香はドアとは逆を向いてソファへ横になっていた為、声を発する人物の姿こそ見えないが……聞き間違える訳がない。この週末、何度耳にこの声が蘇っていたことだろう。
忘れたくても聞こえて、心を抉り続け、締め付けては真衣香を捕らえて。 一度も消えてはくれなかったのだから。