いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
もう、どの坪井が本当なのか。真衣香が耳にしたどの言葉が、偽りなのか。思い返したところで何もわからないから。
全て、忘れてしまいたいと願っていたのに。
「何がですって、お前なぁ」
笑顔を貼り付ける坪井に気を取られている間に、八木が怒気を大いに含んだ声で坪井に凄んで見せた……ような雰囲気を感じたので慌てて顔を上げて口を挟む。
「か、風邪です八木さん! 倒れたの風邪……」そう大きな声を出したのでゲホゲホと大きな咳が出た。
「え、声……どうしたんだよ。立花、風邪引いた? ごめん、やっぱコート追いかけて渡せばよか……」
「坪井くんやめて。今、会社だから。そんな話しないで」
心配そうに言って、一歩、真衣香が座るソファに近づこうとした坪井に、拒絶の意も込めてきつく言い放った。
どうせ、本心は心配なんてしていないんだろう……。 さすがに、そう思ってしまったから。
「……だな、ごめん」
立ち止まった坪井が謝る。悲しそうに目を伏せる意味がわからない。
(悲しいのは、私じゃないの!?)
そんな憤る気持ちさえ、申し訳なく感じてしまうような、表情を見せられて。また心があの夜に舞い戻ってしまいそうだ。
しん……と静まり返った、その沈黙を突如鳴り響いた着信音が途切れさせた。