いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「だ、大丈夫です……。 とりあえず、帰って寝ようかなって」
「了解」
小さく頷いた八木は視線を前に戻す。
そうして、ビルの敷地から出ると車道を進んだ。
流れる景色を眺めていると、急激な眠気に襲われる。 うつらうつらと船を漕ぎそうになりながらも踏ん張っている真衣香の隣から笑い声が聞こえた。
「……ぶっ、ほんっとお前はうちの犬に似てるわ」
なんて言われてしまったものだから、これでも申し訳なさから眠ってしまいそうな自分を奮い立たせていたというのに。
「犬じゃありません」と、むくれて心置きなく真衣香は眠りについたのだった。
***
ペチペチと何かが弾ける音がしている。
(……痛い)
「……こ、……きろ! おいマメコ起きろって」
耳元に響いた声と、頬に刺激を感じ、真衣香はうっすらと目を開けた。
「や、ぎ……さん」
ぼんやりと、見えてきた顔に呼びかける。
「あー、悪い悪い。 怠いよなぁ、大丈夫か?」
聞かれたので、大丈夫の意を込めて、こくん、と頷く。
「多分着いたぞ、合ってるか? 何階だ、部屋は」
真衣香を、車のドアを開けて覗き込んでいる八木。その肩越しに見慣れた風景が見えた。
(なんで、八木さんがうちにいるんだろ)
ぼんやりと考えながら、また、こくんと頷いて「201ですよ」と、答えた。
頭が重く、モヤがかかったようで記憶を思い返すこともできない。
ただ、八木が真衣香の自宅にいるなんてあるわけがない『夢』だと認識し、抱き寄せられる感覚に素直に身を任せた。
途中「鍵はどこだ?」とか「おい、入るけど。 一応言っとくぞ。 さっきの一発やるやらなんやらの話は、あいつ黙らせるためのデタラメだからな。忘れろよ、何もしねぇから」
とか。慌てたような声も聞こえて、何だか真衣香の知らない八木の一面を夢の中で見たような気がしていた。