いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「あー、俺も相手してくれねぇかなぁ」
「バカじゃねぇの、顔で夜の相手選んでるんで無理ですって言われるオチだし」
「は、毎晩空いて違うってか。 ヤバくね?何人いるんだよ」
と、主に男性陣の声。
聞こえてきた内容を理解できないまま真衣香はフリーズした。
(……え、私のこと? だよね、こっち見て言ってたもんね? え??)
よりにもよって、今日は、営業部の大きなガラス窓を拭いていた。
それさえも「今日は坪井に相手させるんですか、立花さーん」なんて、小声で冷やかされてしまう始末。
(な、なんで!? てか、よ、夜の相手とか二股とかどうなってるの……)
二股どころか、真衣香は坪井に振られたのだし。夜の相手だなんて言われても、悲しいかな。経験したこともないままなのに。
動揺し、手を止めて考え込んでいると、頭上から声がした。
「おはよ、もう終わり? 持とうか?」
「……え?」
9時の事業開始まで、そう時間も残っていなかったので、そろそろ片付けて仕事を始めようと思ってはいたのだが。
声をかけてきたのは、うろたえる真衣香を、さらに追い詰める人物だ。
「風邪、大丈夫? あ、お前のコート人事部の女の子に預けてるから受け取っておいて。 ごめんな、返すの遅くなって」
片眉を下げて、遠慮がちに笑う。
真衣香は、呟くように、その名を呼んだ。
「……つ、坪井くん、どうして」
聞こえていないのか、坪井はそのまま話し続ける。
「今日、八木さんは営業所まわるとかで、夕方までいないんだって。 聞いた?」
「う、うん、昨日、電話で話したから」