いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

 

***

定時を過ぎた19時。
このところ繁忙期だということもあり、雑務に追われ総務も自然と仕事量が増えていた。

時計を見ながら、しかし真衣香は全く別の話題を八木に振った。

「……実は、八木さん、モテるんですね」

ボソッと不服そうに言った真衣香を、トントンっと八木が書類をまとめながら横目で見る。

「あ? なんだいきなり」
「だって、坪井くんに負けず劣らず騒がれてて……」
「いや、坪井と並べんなよ」

坪井の名を出すと、八木は心底嫌そうに眉を寄せて大きなため息を吐いた。
今や、真衣香よりもその名前に敏感なのではないかと思う程だ。


――坪井と八木が不穏に睨み合い、また、八木の急な提案があったのは、週始めのこと。
もう数日が過ぎていた。
噂話とは恐ろしいもので、この数日の間で瞬く間にその内容は変化してした。

『相手は八木さんの方だったんだって』
『一緒に帰りながらすんごいベタベタしてたって!』
『え? 八木さんの方が? 意外すぎる!』
『じゃあ坪井くんは遊ばれてただけなの?』
『え、立花さんが坪井くんを?』
『清楚な感じがモテるんだなぁ』

と、こんな具合に進んで。
そして、今は。

『じゃあ、坪井くんて今、狙い目なんじゃない!?』
『そっか、咲山さんと別れた後に立花さんって話だったもんね』
『昨日聞いたら彼女はいないって言ってたよ』
『マジで!? 久々本気でフリーなんじゃん!?』

そんな声が至るところから聞こえてくる。

標的が坪井に絞られ、真衣香へのチクチク痛い視線も何となく和らいだというか……

(坪井くんに注目が集まっているというか)

そういった話に興味のなかった真衣香なのだが、やはり目立つ坪井に好意を寄せていた人物は少なくはないようで。
今がチャンスだとばかりに、今日1日だけでも何度か見かけた。
仕事の合間、楽しそうに坪井を囲む女の人の姿を。

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