いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
八木は、やれやれと肩で大げさに息をして「仕方ねぇな」と、手を離した。
「酷い……、気にしてるんですから丸顔」
「怒るなよ。 褒めてんだぞ、可愛いと思って言ってんだから」
「……え」と、驚きのあまり真衣香の動きは停止した。
優しい声。
けれど、本当なのか嘘なのかわからない。
ある意味、甘い言葉を疑えるようになってることは成長なのかもしれないが。
呆然とする真衣香の頭を撫でて、カラカラとイスに座ったまま八木が移動する。
膝が触れ合う距離に来て、止まり、目線の高さを合わせるようにして少し屈んだ。
「え、や、八木さ……」
鼻先が触れそうになるまで顔を寄せて。
「聞こえなかったか? 可愛いから、お前は。 そう思ってる男は、いくらでもいる」
八木が囁くので慌てた真衣香は、反射的に大きくのけぞった。
「あ、こら、お前何やって……」
案の定、真衣香はバランスを崩し、イスごとひっくり返りそうになったのだが。
「あっぶねぇな」と、焦った声を出した八木に腰を支えられ抱きとめられた。
イスだけが真衣香の背後で倒れて、音を立てる。
「や、八木さ……」
イスに座る八木の、足の間に身体を挟まれるようにして抱き寄せられている真衣香の体勢。
特に意識したことがない八木が相手だとしても、この格好はさすがに体温が上がってしまう。
「……なあ、お前さ」
そんな真衣香とは逆に、落ち着いた様子の八木。
自然と更に身体を密着させて、何かを言いかけようとして、黙り込んだ。
しかし、聞き返す余裕もなく真衣香はただ現状を把握しようと頭をフル回転させていた。
何より、八木を強制的に少し見下ろす形になっているのが、なぜだろう、妙に恥ずかしい。