いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
すぐ目の前にいた真衣香に八木が驚きの声を上げる。
「うお!? ビビらせんなよ! 何だよ、お前まだ帰ってなかったのか……って、ちょい待て」
八木は、目を合わせず走り去ろうとする真衣香の手首を掴んで、引き留めた。
「何で泣いてんだ?」
聞きながら、八木はフロアを見渡す。
そうして電気が消されていないままの給湯室に視線を定めて、その動きを止めた。
「誰かいんのか?」
真衣香の肩に手を回し、逃げてきた道を八木が戻るように進む。
開かれたままの給湯室のドア。八木が長く大きな溜め息を吐いた。
「まーた、お前かよ。 なに泣かせてくれてんだ? あ? 人の女と軽々しく二人きりになるな。 つーか、仕事じゃねぇんなら許可取れ、俺の」
八木の言葉に、坪井は前髪をかき上げながら俯かせていた顔を上げて、恐ろしいほどにゆっくりと真衣香たちに視線を向けた。
「また泣かせてごめん、立花」
八木にではなく、真衣香にそう言って声を掛ける。
不快感をあらわにするよう、真衣香に絡みつく八木の手には力が込められた。
「おいコラ、お前俺には何も言うことねぇってか?」
「いや、ありますけど」
真衣香に向けられていた鎮痛な面持ちから一点、冷ややかな瞳が八木を見据えた。
「今日は、帰ります。 ただ、俺も立花のこと好きなんで。 それだけ覚えといてもらえますか」