いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


スマホや財布くらいしか入ってなさそうな、小さなバッグにいくら殴られたところで痛みなど足りないような気がしてしまう。

「私だって何回も思ってたよ! 涼太なんかいらないってこっちから願い下げだって……い、言ってやりたかった! 何度も何度も思ってた!」
「……ごめん、夏美」

こんなふうに泣き叫ぶ咲山を見るのは初めてのことだった。『何回も思ってた』と言う、咲山は。見えないところで、きっとこうして涙を流していたんだろう。

「でも、でもさぁ、会いたかったもん。会いに行ったら、涼太いつも優しいから……諦められないじゃん。勝手な男で酷い男だって知ってるのに、知ってたのに!」

「ごめん」以外、何も返せない、その事実から目を逸らすまいと。咲山の泣き顔を瞳に焼きつけるよう、見つめた。

人が傷つく姿を見て、胸が痛むのは真衣香を泣かせた時と、今とで、たったの二度目だ。

(でも、それも、同じじゃない)

今、咲山を傷つけて苦しい、その理由はきっと。

(俺があいつにされたら……どうなのか)

置き換えて考えると、押し寄せる悲しみで喉が詰まりそうなほどに息苦しい。
希望を持っては打ち砕かれ、受け入れても拒んでも貰えない。

(生き地獄だろ……)

誰かを傷つけると、こんなにも自分の心も軋むものなのか。
何故、今まで平然と人の心に無関心でいられたのか、わからない。

「俺、優しかったことなんかないだろ」
「優しかったよ、いつまでたっても離れられないくらいには」
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