いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
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(よくわからないけど、ドライブしてる……高柳部長と)
平和だった1週間を終えようとしていたはずが、まさかの自体に陥っている。
流れる景色を目で追う余裕もなく、真衣香は太ももの上でギュッとスカートを掴んでいた。
「今更ですが、ご予定は問題ありませんでしたか?」
本当に、今更な質問をされたのだが緊張のあまり薄い反応しか返せない。
「だ、大丈夫です」
「そうですか、それはよかった。明日は休日ですし、ゆっくりできますね」
「……え?」
(だ、誰とですか?)
まさか、高柳とだなんて言うまい。
胸の中に浮かんだ少々恐ろしい疑問を思わず声にしてしまいそうになったが、音楽も流れていない静かな車内に鳴り響いた無機質な着信音により難を逃れた。
高柳は耳もとに手をやり、イヤホンに触れた後、会話を始めた。
「遅かったな」
そう言って応答した高柳の耳元から、わずかに漏れ聞こえる声。誰のものか判別できないけれど、もちろん営業部の誰かなのだろう。
「ああ、その書類は戻ってすぐに承認するから。小野原さんには早く帰ってもらってくれ、お前に付き合わせるな」
『小野原さん』と確かに高柳は言った。
真衣香は無意識に耳を澄ませてしまう。だって、小野原を足止めする営業部の人間なんて限られているではないか。
「ああ、それよりもクリスマスの陳列は全店舗話つけてきたんだろうな?ハロウィンで任された棚を、クリスマスでは持っていかれるなんて、お前の怠慢でしかない」
高柳の眉がぴくりと動く。
「あと1店舗まわりきれてない?バカを言うな、今日中に終わらせろ。どの店もこの時期、遅い時間帯の方が捕まりやすいだろう、担当者は」
真衣香に対する声は、やはり随分と優しいものだったのかもしれない。
エアコンが効き始め暖まり始めた車内の空気が、再びヒンヤリと冷たさを帯びたような気がした。