いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
(どうしよう、どうしよう……私、受け取ってからどうしたんだろう?何で覚えてないの?ほんとになくしちゃった?どうしよう、わかんない)
「気ぃ緩んでないですかー?男たぶらかせてる暇あんなら仕事しろや仕事さぁ」
頭の中でグルグル考えるだけでは、何も解決しない。けれど、解決するにはどう動けばいいのかが全くわからない。
「……っ、す、すみませ……」
「え?泣けば助けてくれんの?八木さん?坪井?つーか部長にも絡んでんだろ、あんた。引くわマジで」
鼻で笑われて、八木や坪井の名前を出されてしまって……。いよいよ熱くなった瞳の奥から涙が溢れ出てしまった。
顔を上げることができない、声を――
「川口さん、ストップ。そこまでにしてもらえますか」
……声を、出そうにも唇が震えて、何も言葉を返すことができずにいた、そんな真衣香の背後から声が聞こえた。
(な、なんで……)
思い出すことも、考えることもなく……誰の声なのかわかるのだから悔しい。
悔しいのに、ホッとしてる自分がもっともっと悔しい。
(どうして、坪井くんが……)
「はあ?なんだよ、坪井。お前、いつも俺の仕事なんて眼中にもないくせに彼女のことは助けに来たってか?」
「お疲れ様です、川口さん。今戻りました。や、彼女じゃないんですけどね」
振り返ると、確認するまでもなく彼の姿があった。
ニコッと笑みを浮かべた坪井が、ゆっくりと真衣香の隣まで歩いてきて立ち止まる。
ひんやり冷たい外気をまといながら、ネクタイを緩めて、口元にだけ笑みを作って。小首を傾げながらゆっくりと言葉を続けた。
「えーっと、まず、訂正しません?誰が男たぶらかせてるって?てか仮に、事実でも関係ないでしょ、今」
穏やかな声からは連想できない、張り詰めた空気を感じる。
二の腕のあたりを力強く掴んできた坪井の手が、その背中に真衣香を隠した。