いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「ちなみに、川口さん気付いてます?笹尾さんめちゃくちゃこっち見てますよ、ずっと。なんか知ってんじゃないです?」

(さ、笹尾さん?)

真衣香よりひとつ年下の、小柄で可愛らしい営業事務の女性だ。
主に川口の担当をしていると聞いたことがある。

「はあ?笹尾ぉ?」

さすがの川口も、怒りよりも、驚きが強い、そんな声を出した。

「あはは、まわり見えてないですねー。俺ちょっと話してきていいですかね?笹尾さん」
「ちょ、ちょっと待って坪井くん。どうしていきなり……」

坪井の腕を掴み、引き止める真衣香。坪井はそんな真衣香の耳元まで屈んでこっそりと言った。

「大丈夫、適当に言ってないよ。みんな、さっきから遠巻きに見てるだろ?その中でも何か言いたそうに行ったり来たりしてるの、あの子だけだから」

坪井は、一体いつの間に笹尾の動きを見ていたのだろう。頭ごなしに否定するにしては落ち着いて安心させられてしまう声だった。
真衣香は「わかった」と、小さく頷いて、同意してしまう。

しかし、坪井が近付くよりも前に、自分に視線が集まってることに気が付いたのだろうか。笹尾が後ずさった。
それを見ていた川口が「笹尾、ちょっとこっち来い」と、明らかに怒気を含んだ声で名前を呼ぶ。

意を決したようにこちらへ歩み寄った彼女は――笹尾は、涙を浮かべた瞳で坪井や川口を見上げた。

「わ、私のデスクの下に、置いてます。小さな荷物だったんで。立花さんのハンコを勝手に押したのも、わざとです……」

< 281 / 493 >

この作品をシェア

pagetop