いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「もう戻っていたのか」
高柳は川口のデスクに座り、長い脚を優雅に組みながら坪井に声を掛けてきた。
その隣で、どんよりと突っ立っているのが本来そこに座っているはずである川口だ。
「はい、笹尾さんに話聞いてたんで」
「立花さんは? どこにいる?」
「2階です。着替えてると思いますよ。小野原さん達と帰らせようかと思って」
「それがいいな」と軽く頷き、立ち上がる高柳。チラリと隣で縮こまる川口を見て言った。
「それはそうと、川口と話したが」
名前を出され、ビクッと肩を震わせる。
長身の高柳の隣にいる川口の姿は、まるで悪巧みを叱られている子供のようで何とも情けない。
「ああ、はい」
いくら坪井が冷たい視線を送ったところで、目が合わないのだから、未だ消えない怒りはどこにやれというのか。
「川口絡みで辞めた人間がいることは聞いているし、今度の4月は新部署ができたりと、恐らく人事も大きく動くだろからな。ついでと言うには聞こえが悪いが川口を動かそうかとも思ったが」
"だが"と言うからにはないのだろう。あからさまに不機嫌な顔を向けると、高柳は愉快そうに口元に弧を描いた。
「え? 俺まだこの人と仕事しなきゃいけないんですか? いっつも仕事押しつけられて、挙句立花に濡れ衣着せて巻き込んだような、この人と?」
「わかってるだろう。何も起こっていない訳だから何もできない」
「まあ、そーでしょうけど」
(立花が巻き込まれてなきゃ、放置してもうちょい大ごとにできたけど……仕方ないか)
はあ、と。高柳にも川口にも聞こえる盛大なため息をついて答えた。
その様子に小さな笑い声を上げた高柳が、笑いを止められないままに話す。
「今回は、だ。それに、川口の俺には見せない一面もしっかりと把握できた訳だからな。便利になったものだ最近は」
言いながら預けていたスマホを坪井に手渡してきた。
(いや、絶対知ってましたよね)
心の中で悪態をついていると、高柳と目が合った。また、楽しそうに笑いだす。
「次はない、ということで。頑張ってもらおうか」