いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
最後には「お前ほんと飽きねぇわ」と懐かしむような声を付け加えて。
その後、急に黙り込んだ八木の横顔が、笑顔から一点、切なそうに眉を寄せて動かなくなった。
「八木さん?」
「……ん?」
「何かありましたか?」
八木にしては珍しく、返事はすぐに返ってこなかった。突っ込んで聞いてはいけない雰囲気だったのかもしれない。
安易に踏み込んではいけない、人のテリトリー。
そう思って謝ろうとした真衣香よりも少しだけ早く、八木の声が響いた。
「何もねぇよ。まぁ、もうちょいしたらあるかもしんねぇけど」
「も、もうちょいしたら……って?」
答えてくれた言葉の意味が理解できず、そのまま聞き返してしまった。
しかし、さらに返ってきたのは、どうやら答える気などなさそうな、いつもの八木らしい笑顔。
意地悪で自信たっぷりで、真衣香をからかうように口角を上げてニヤリと。
愉快そうに笑う、見慣れた表情。
「ま、とりあえず腹ごしらえしよーぜ。急がなくても、多分大丈夫だし」
「多分って?」
「いつも昼飯食いに行ってる系統、適当に空いてそうなとこ入るぞ」
(うん。答える気ゼロみたい)
いつもの八木らしくなくて、でもやっぱりいつもの八木で。真衣香は少しホッとしていた。
「はい! 今日はトマト系は食べませんけど」
こんなふうに言い合える男性は、八木だけだ。思う形は違うけれど、大切なことに変わりはないのに。
(このまま八木さんと一緒にいたら、坪井くんのこと考えなくなったりするのかな)
なんて、揺らぎそうになる自分を心の中で叱咤した。しかしそうしたところで、行き着く先がわからないままなのだけど。