いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「借りを返すなら私がお店を選んで……八木さんをエスコート的な、あれこれしてですね、おもてなししなくちゃいけないんじゃないですか?」
話しながら浮かんだ疑問をぶつけた。八木に言われるままに着いてきたけれど、これでどうしてこれまでの積み重なった借りを返せようか?
しかし、隣に座る八木は「マジでアホだな」と呆れ返ったように深い溜息をつき、羨ましいほどに長い脚を組み替えた。
「だって、私が楽しんでるだけで……」
「勝手に決めんなよ。返してもらってるよ、多すぎるくらいだろ」
キッパリと言い放った優しい声と、笑顔が、まっすぐ真衣香に向けられていた。
「……お、多くはないです」
その声も、笑顔も、今の真衣香には苦しいばかりだ。気持ちに応えられないのに、と沈んでいくから。
もしかしたら坪井は、信じ切って離れない真衣香に似たような気持ちを抱いていたのだろうか。
そんなことを考え込んでいると、
「こちらへどうぞー」と、明るい店員の女性の声にハッと我に返らされた。
いつのまにか、一番奥のテーブルが空いたようで案内された。
席に着いてすぐメニューを眺め、真衣香がデミグラスソースのハンバーグセットに決めると、八木がまた我慢ならないといった様子で吹き出した。
「何ですか」と睨めば「じゃあ俺はトマトソースの方にすっかな」なんて笑うから「押しつけられても私は絶対食べませんからね」とまた睨みつけて。
心地良いんだ。
力を入れずに会話ができて、笑いあえて。
比べて坪井と向かい合った時は、ドキドキしたり、話す内容を気にして戸惑ったり。全く違う気持ちで、心臓も動き方が違ったんじゃないかってくらいに全てがまるで重ならなくて。
どちらが幸せなんだろう、と。
……考えるまでもなく定まっているはずの答え。
それを、頭の奥底で否定する、真衣香自身の弱々しい抵抗を感じる。
認めたくない、本音だからだ。
溜息まじり、時折沈む真衣香の表情をじっと見つめる八木の視線に、気が付ける余裕が真衣香にはなかった。